アルト・アディジェの白は、伸びやか。─"緩やか"を選んだ、ある試飲会の記録
- Karin Yoshimura
- 7月5日
- 読了時間: 3分
更新日:7月6日
イタリア北部、山の産地の白は、すっきりと伸びやか。先日のアルト・アディジェの試飲会で私がときめいたのは、オーセンティックなタイプより、するりと緩やかなボトルたち。
先日、イタリア・アルト・アディジェ(南チロル)のワインだけを集めた試飲会に参加してきました。会場は静かな熱気で、23もの造り手のボトルが並んでいました。イタリアと言いながら、ほとんどオーストリア。アルプスの麓、ドイツ語も日常的に話される、国境の山の産地です。
アルト・アディジェのワインの魅力は、私にとっては白。標高の高い畑で、昼と夜の寒暖差にさらされて育つぶどうは、きりっとした酸と、まっすぐ伸びていくような香りをまといます。ドラマティックさもありながら、清らか。私がこの土地の白を好きなのは、たぶんそこにあります。
正直、こういう会に行っても、私はいわゆる"すごいワイン"にはあまり手が伸びません。樽をきかせた立派な白も、評価の高い旗艦キュヴェも、たしかに見事。でも今、50代になって私の気分は、もっと肩の力の抜けた、するすると飲めるほうへ向かっています。少しづつ試飲して、自分の感性にピンと合う、緩やかめなボトルを選んで回りました。

とくに心に残ったのは、ヴァッレ・イサルコ(イザルコ渓谷)の白。ここはアルト・アディジェのなかでもいちばん標高が高く、涼しい一角。ケルナーやシルヴァーナーといった、少しマイナーな品種が、伸びやかに香ります。ステンレスタンクで仕込まれた、混じり気のないフレッシュさ。
山の朝の、澄んだ空気を思わせる味わいでした。こういう明るい静けさのある白にとても共鳴しちゃう。

もう一本、名前に惹かれたのがジルランの「448 s.l.m」。畑のある標高448mが、そのまま名前になった白です。地域を代表する品種をブレンドした、酸のバランスの心地よい一本。ワインに土地の高さがそのまま刻まれているなんて、飲む前から、少し風景が見えてくる気がします。


日常に寄り添う白、という意味では、ホフステッターの「de Vite」も好きでした。気負いのない、けれど芯のある白。特別な日のためではなく、なんでもない夜のためにこそ開けたくなる、そういう一本。

それから、思いがけず心をつかまれたのが、エングラーのオレンジ。スキンコンタクトでほんのり橙色に染まった一本は、香りは華やかなのに、口当たりはあくまで軽やか。
イタリア北部は白ワインもちょっとスキンコンタクトして作られるくらい、白やオレンジの造形が深いエリア。これは“緩やかなオレンジ”とでも呼びたい、するりと寄り添う味わい。白の伸びやかさが好きな人にこそ、試してほしい入り口です。
そしてもうひとつ、この土地でぜひ知ってほしいのがゲヴュルツトラミネール。アルザス品種と思っている方が多いのですが、実はその故郷はここ、南チロルのトラミン(トラミーン)という小さな村。その村の名が、そのまま品種名になったとされています。
ライチやバラを思わせる華やかな香りは、この日の会場でも健在。でもよりアルザスのそれより、上品で柔らかい味わいで、いくつか印象的なボトルに出会いました。
華やかな香り系も、伸びやかな白も、緩やかなオレンジも。同じ山の産地から、こんなに違う表情が生まれる。どれを選ぶかは、その時々の気分次第。ワインは結局、今の自分の気持ちが共鳴するものを選ぶなぁと、あらためて思います。(もちろん赤も、ピノネロやスキアーヴァもよかった!)

アルプスの麓で生まれた、伸びやかな白。よく冷やして夏の食卓にそっと添えるだけで、きっと風がひとすじ通り抜けます。
次に一本を選ぶとき、"立派さ"ではなく"伸びやかさ"を基準にしてみると、また少し違う景色が見えてくるかもしれません。



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